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詩だけがあればいい (「ゴロウ・デラックス」 3/1)

今日のゲストさんは「若い人を中心に人気」(外山さん)で「謎の多い方」(吾郎)。
「とても好きな詩人さんなのでお会いするのが楽しみ。」と吾郎は言いましたが、本当にミステリアスな展開になりました。

最果タヒさん。ブログ・twitterを中心に発信し「新世代の詩人」と呼ばれる一方、2008年に第13回中原中也賞、2014年に第33回現代詩花椿賞など伝統的な賞も受賞しておられます。
詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は2017年に映画化。最近ではアーティストに歌詞を提供し幅広く活躍していらっしゃいますが、素顔を明かさないためその人物像は謎に包まれています。

ということでスタジオに登場したのは緑色で毛むくじゃらの編みぐるみ。
「こんにちは」とその編みぐるみが可愛い声で挨拶しました。この編みぐるみは最果さんがご自分で持ってきて下さった物です。
「こういう形で出演して下さる、と。」と外山さん。
「顔を出されない方なんですね。でも、僕らからは見えてるんですよね。」
吾郎と外山さんはセットの外へ目線を動かしました。二人は最果さんの素顔を見ているわけです。
最果さんが素顔を明かさないのは
「作品の向こう側に作者の顔が見えるのが好きではない」
から。国語の教科書に作者の顔写真が載っているとがっかりしたそうです。
「自分の中で掴みかけてたものが急にその人のものになってしまう。『この作者のお話でした』と完結してしまうのがイヤなので。」
「読者に対しての気遣いですね。僕らで言うと舞台のカーテンコールで出て行く時、素をあまり見せちゃいけないんじゃないか、って思ったり。」(吾郎)
「その役の感じのままで・・・ってことですね。」(外山さん)「急にオフに戻ってると・・・」(最果さん)
「そう、それを見たい人もいれば余韻を楽しみたい人もいるから。そういう感覚に近いのかな。」(吾郎)

まず詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」から冒頭の詩を吾郎が朗読。

都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。
夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さない間、
きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。

吾郎の低めの声がこの詩の世界にマッチしている・・・と私がうっとりしていると、
「あまり上手く朗読できなかった」と吾郎が自分にダメ出ししました。
「そしてだからこそ」の部分を「そして、だからこそ」と読んでしまったから、というのですが、それを聞いた最果さんは、
「朗読ってその人が出ると思うんです。その詩をどう読んでどう捉えているか。どこを止めるかどこに抑揚をつけるかで変わってくるので、吾郎さんそのものという感じがして嬉しかったです。声になった自分の詩を聴くのすごい好きです。その人の作品になって返ってきてる感じがして、書いて良かったなという達成感に繋がるというか。」と喜んで下さいました。
映画も同様で、石井裕也監督の元に行って新たな作品になって返ってきたと感じたそうです。
「『書いて良かったな』と思うし『こんな作品が生まれるんだ、すごい』と単純に観客としての喜びがありました。」(最果さん)

「僕は元々、人は一人で生まれて一人で死んでいく、孤独だからこそ美しい、と考えていて。だから最果さんの詩の根本が好き。」と吾郎が言うと最果さんも
「仲良しサイコー、苦手。友達100人、ハァ?って。」と共感し
「私も。だからジャックナイフのような方かと思ってた。厳しめの友達の優しさって感じ。」と外山さんも盛り上がりました。3人とも根本の部分が同じようです。
最果さんと「詩」との出会いはちょっと独特です。
「私は関西出身で、話していてもオチや面白さを求められて、喋るのが嫌いな子になったんです。で言葉に疲れているときに音楽の歌詞に出会って、『分からなくていい』んだと思って。共感から逃れたかったんです。」
言葉に疲れているときに言葉で表現する世界に惹かれたというのが興味深いです。

課題図書 : 「天国と、とてつもない暇」最果タヒ (小学館)

まず、吾郎が一番好きだという「星」を朗読。
「男の人の声で『私たち』と言われるのがとても素敵。」と最果さんは嬉しそうです(声が)。「男の人の中にも私の部分があるし、女の人の中にもぼくの部分があるし、そこに響く言葉が書ければいい。」
文字の選択やレイアウトにもこだわりがあります。ひらがなでふわっと伝えたり、縦書きと横書きを使い分けたり。
「横書きは軽く言葉が自分の中に入ってくる。短距離走のイメージで、ちょっと強めの言葉が多い。縦書きだと次の行に行くとき首を下から上に動かすので、仰々しくなる。」
「(縦書きには)仰々しさと重さと硬質な感じが・・・」と吾郎。吾郎が朗読した「星」は縦書きの詩です。
「詩を作った後にやっぱりこっちだったなとか・・・いつやめるとかあるんですか?」(吾郎)
「編集さんが『もう無理です』『ここで修正はお終いです』と言ったら・・・」(最果さん)
一度で書いて言葉を動かしたくない作品もあれば、修正をする詩もありますが、
「あまりまとめちゃいけない。詩だけで完結すると読む人は『自分には関係ない、誰かの具体的な話』と思ってしまうから。直してまとまりが出て、ダメだと思って元のバランスが悪い(詩)に戻したり。」

最果さんは主にスマートフォンで詩を書いています。
「常に携帯電話を持ってて、思いついたら書くんですか?」(外山さん)
「頭を真っ白にしないと書けないんです。文章を書こうとするとまとまってしまったりオチをつけてしまったりするので、できるだけ詩を書く気のない状態、ラーメン屋さんに並んでいるときとかカレー屋さんに並んでいるときとか、そういう時に・・・(笑)」(最果さん)
「じゃあ生活している時に・・・もしかして今この瞬間に浮かぶかも知れない?」(吾郎)
「今は緊張しているから難しい。」(最果さん)
「まだ緊張してますか?!」吾郎は一瞬笑いましたが
「今日は顔を出さない方が良いかもしれない。だってラーメン屋に並んだ時に・・・」
「言われちゃうもん」と外山さんが続けました。
「出ません!」最果さんが力強く宣言すると吾郎は「よしよし」と編みぐるみの頭を撫でました(←羨ましい!)。
今度は外山さんが一番好きな詩を朗読。「クリスマスの日」という詩です。
「可愛いのを選びましたね。」(吾郎)
「色々好きなのはあったんですけど、声に出して読みたくなるという点でこれを選びました。」外山さんの理由がアナウンサーらしくて良かったです。
「(好きなのがいろいろあって)選ぶのが大変だった」という吾郎と外山さんは「オンエアしないけど最果さんに伝えとこう」と言い出し、その他に好きな部分を次々と挙げました。外山さんが特に力説したのが
「後書きの最初の2行、

あなたがどんなふうに生きているのか知ることはできない。
私も、どんなふうに生きているのか教えたくはない。

ここが最高じゃないですか。」
「今日のテーマじゃないですか。俺たち仲間だ共感し合おうぜ・・・やだもんねー、一番やだよね。」(吾郎)「そう。」(外山さん)
と、外山さんの気が収まったところで、
「今日は羨ましくてしょうがないです。最果さんが『稲垣吾郎』をテーマに詩を書いてきてくださったんです。」と紹介しました。
最果さんは稲垣吾郎の中にどんな詩を見いだしたのでしょう。外山さんの朗読を吾郎は頬杖をついて聞き入りました。

まなざしで、触れることを知っている人。

美しさをどうやって愛すればいいのかわからないまま、
わたしは愛にばかり詳しくなった、
朝の光に体を溶かして、すべてが消えていくような、
そんなさみしさを恐れて、夜の中にとじこもる。
触れることなど必要ではない、ぼくらには瞳があるのだからと、
花を愛でる人がいて、朝を愛でる人がいて、
その声に、耳を澄ませている。
遠くの国で、降る雨の音、一瞬、きこえた、
わたしの瞳は、窓に吸い込まれていく、
朝の光が、わたしの涙に溶け込むように、ゆらめいていた。

「2月の朝の詩」

読み終わると外山さんは原稿を吾郎に手渡しました。
「いやあ嬉しい、感動した。」吾郎は目を輝かせて原稿を読みました。
「ありがとう。」
「吾郎さんのブログ・・・お花がすごく載っていて、吾郎さんがどうして美しい物が好きで花を愛してるんだろうと考えたときに、花って触れないじゃないですか、崩れてしまうから。優しく触ることしか出来ないし関わり合うことがすごく難しいけど、見ることで愛でることが出来る。美しい物を好きな人ってきっとそういう所が・・・」
「そうですね、触れないから好きって事は絶対にありますね。お互いに自立してて・・・」(吾郎)
「尊敬することで愛でる、ってことですね。」(最果さん)
「僕のことをここまでわかってくれて。・・・これぼくが書きたかったな。」と突然吾郎は飛躍したことを言いましたが、
「僕が思っていたことなんだけど、自分の力では文章に出来なかった。」と補足しました。
「そう言ってもらえるのすごく嬉しいです。」
と最果さんは喜んでくださいました。
最果さんの詩を聞いて私も吾郎のブログが思い浮かびました。きちんと吾郎の言葉を読んでそこからイメージを膨らませてくださったのですね。
最果さん、素敵な詩をありがとうございます。


今回ご本人が顔を出さないという、新しい演出で番組を成立させたスタッフは流石だと思いました。まだまだやれることはありそうなのに終わってしまうのは本当にもったいないと思います。


拍手ありがとうございます

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