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漫画家→ミュージシャン→芥川賞作家 (「ゴロウ・デラックス」 9/28)

オープニング。今日の吾郎の衣装は白いTシャツに黒のルーズなシルエットのジャケット。カジュアルな装いです。
「今日のゲストは第159回芥川賞の高橋弘希さんです。」
と外山さんに呼ばれて登場した高橋さんに
「おめでとうございます」
といいながら吾郎が花束を手渡しました。
「どうですか?受賞されて」(外山さん)
「受賞されて・・・・・・まあ・・・・・・花束をもらって大変感激しております。」(高橋さん)
「もうたくさん頂きましたよね(笑)」(外山さん)
「まあ吾郎さんから頂いたので。」(高橋さん)
そう仰って下さると吾郎ファンとしても嬉しいです。

「取りあえず会見やらないと駄目って仰ったんで、引っ張り出されてきた感じ」
「嬉しいっちゃ嬉しいんですけど、あまりガッツポーズはなかったかな」
受賞後記者会見でのインパクトある発言が話題を呼んだ高橋弘希さん、38歳。2014年のデビュー以来過去3回芥川賞候補になり、今回4度目の候補で見事受賞されました。今回がバラエティ番組初出演です。
「出て下さるとは思わなかったので良かったですね。」外山さんが吾郎に向かって言いました。
「ね。」と吾郎は同意すると高橋さんに「テレビのお仕事はちょっとはあったんですか?」と訊きました。
「なんか色々(オファーは)あったんですけど、まあいいかな、と。」高橋さんからイメージ通りの答えが返ってきました。
「だって芥川賞受賞されちゃうと黙ってないじゃないですか、メディアが。」(吾郎)
ゴロデラでは芥川賞・直木賞を受賞された皆さんに同時出演していただくのが恒例になっていますが、今回は直木賞の島本理生さんだけが受賞直後に出演して下さったのです。
「今まではそういう話をお断りしてきたんですか?」(吾郎)
「そういえば、ゴロウ・デラックスのオファーを辞退してしまったな、と思って。」(高橋さん)
「そうですよ、なんであの時島本さんと一緒に来てくれなかったんですか。(芥川賞と直木賞が)セットで来て、島本さんと2人でお花束を受け取る、という・・・」(吾郎)
「お一人というのも勿論ありがたいですけど、ああ高橋さんダメだったんだ・・・と。」(外山さん)
「そう、あの記者会見の感じでさ・・・『会見呼ばれたから来たんです』とか言って・・・たぶん嫌なのかなと思った。」(吾郎)
スタジオではスタッフから笑いが。気がつけば番組開始早々、吾郎と外山さんが高橋さんにダメ出ししています。
「でもなんで出て頂けることになったんですか?」(吾郎)
「いや、まあ、取りあえず・・・クイズ番組よりはいいかな、と。」(高橋さん)
「はは!クイズ番組からはオファーないですよ、大丈夫ですよ。・・・ありました?」(吾郎)
「クイズ番組とか、なんかよく分からないのがいっぱい・・・。ゴロウ・デラックスは本を紹介してくれる番組というのを小耳に挟みまして。」(高橋さん)
「はい」(吾郎)「良かった」(外山さん)
「本日ぬけぬけとやって来ました。」(高橋さん)
「嬉しいなぁ。」(吾郎)

「(芥川賞発表)当日はどこで待ってたんですか?」(外山さん)
「神田の魚屋さん・・・鮮魚売場とかではなく、魚を卸すお店の個室にいました。」(高橋さん)
「大丈夫、魚屋さんで待ってるとは思ってないですから(笑)」(外山さん)
「飲食店ではなくて?」(吾郎)「居酒屋さんみたいな所ですか?」(外山さん)
「そう、居酒屋さんです。」(高橋さん)
「居酒屋さんって言えば良かったじゃないですか。」吾郎がまたダメ出ししました。
「最初からそう言えば良かったです。」高橋さんは素直に認めました。
「さあ、作品について伺っていきましょ。」吾郎の声は優しいです。

課題図書 : 「送り火」 高橋弘希 (文藝春秋)

主人公は東京から青森に引っ越した中学生の歩。転校先の中学はクラスの男子は6人だけという小さな学校だった。何度も転校をくり返している歩は晃がグループのリーダーである事を見抜き、級友たちに溶け込む。しかし徐々に閉鎖的な人間関係に巻き込まれていく・・・。
「いやあ、すごかったですね。」(吾郎)
「行ったことがない場所なのに光景が浮かんでくる。私もここにいる気がする、という。」(外山さん)
「確かに行ったことある気がした。自分の記憶の中の何かと繋げてくれる感じがして。」(吾郎)

「送り火」を読み解く為のキーワードは2つ。
1. 閉塞した田舎に潜む暴力
この中学には代々男子生徒に受け継がれるルールがあった。それは花札を使った「燕雀(えんじゃく)」というゲーム。一人二枚配られた花札の月の合計が13に近い方が勝ち、13を超えるとドボンで失格。そしてこのゲームの敗者には、異様な暴力性を持った罰ゲームが用意されていた・・・。
その場面を3人で朗読。

「久しぶりに回転盤でもするべし。」
六本の試験管の一本に硫酸が混じっている。燕雀でドボンになった者が、どれか一本の溶液を手の甲にかける。
久しぶりに、と晃が言ったのは、そうした六つのうち一つだけハズレが交じっている遊戯を“回転盤”と言い、過去によく行われていたらしい。
「さすがにあぶねぐね――――。」
「薄めてらはんで。」
「たばって。」
「せいぜい火傷するぐれぇだ。」
晃は桐箱から花札を取り出し、日向のコンクリートへ黒札を配っていく。
稔が蓮華のカスと松のカスでドボンだった。
稔は試験管立ての上で、右手を右往左往させた後に、端から二番目を選ぶ。と、背後から有無を言わせず、藤間が稔の腕を押さえる。
手の平が、コンクリートに押し付けられる。
脂肪でふっくらとした稔の手へ、晃が試験管を傾けていく。
乳白色の液体が手の脂肪を滑り、次第に皮膚が露わになる。
そこには何も変わらない、肌色で、血色の良い、健康な手があった。
稔は半笑いを浮かべたままで、苦痛の色は覗えない。皆から歓声が上がった。
「どれがハズレだったんだべな?」
「本当はどれもただの牛乳だべ、だばって硫酸だきゃ。薄めても、稔の手が骨さなるかもしれね。」
すると、皆からは、安堵とも落胆ともつかぬ笑いが起きた。

「怖いですね。硫酸・・・」(外山さん)
「これはゲームを作ったということですね?」(吾郎)
「はい、花札ゲームを作ったんです。」(高橋さん)
「ちょっと怖いですよね。」(吾郎)
「実際やってたら怖いですよね。」(高橋さん)
「よく考えられましたね、こんな怖いの。」(吾郎)
「だからどんな人なんだろうと思いますよね。」(外山さん)
「いやでも、本人は大変陽気な・・・」と高橋さんが言うと吾郎は手を叩いて
「陽気ですか?」と笑いながら訊きました。
「今はだいぶ陽気だと思います。3割増し位陽気。」高橋さんからようやく冗談が出ました。
花札のゲームにした理由は、
「花札って絵柄が色々あるし。柳のカス札っていうのがあるんですけど、あれだけ異様な札なんです。全面が何か赤くて、真ん中が黒で、枠の外から鬼の手が伸びてるみたいな。この柳のカス札を色々使えるんじゃないかな、と。」(高橋さん)
「元々花札をよくやってたんですか?」(外山さん)
「やったことはあります。でも多分トランプの方がやってます。」(高橋さん)
「ゲームがお好きなんですか?」(吾郎)
「ゲームは・・・プレステの方が好きですけど。」(高橋さん)
やはり世代ですね。

独特の発想法で作品を作り出す高橋さんは、小説家になるまでの人生も独特でした。
まず1990年代後半(10代後半)には
「漫画家を志していたんですって?」(外山さん)
「一瞬漫画家になりたかったんです。」(高橋さん)「なぜ?」(外山さん)
「当時『週刊少年ジャンプ』を皆読んでいたので、ジャンプに持っていこうかなと思って・・・」(高橋さん)
「絵は描いたんですか?」(吾郎)
「絵は・・・あまり得意ではなかったんですが、一応描いて・・・。」(高橋さん)
その作品は「火星人大来襲」。
「赤塚不二夫もびっくりのコメディー漫画となっておりまして。傑作コメディです。」(高橋さん)
そのストーリーは、
「火星人というのは宇宙船の技術には優れているんですけど軍事技術は全く持っていない。で地球にやって来たら地球人は戦争ばかりしている大変野蛮な民族であるということが判明して、帰ろうとするんですけど宇宙船が壊れて帰れなくなる。」(高橋さん)
「ほう。コメディになってきましたね。」(吾郎)
「しかしながら火星人は擬態する能力があって人間に化けることが出来るんです。だから人間に化けてFamilyMartでバイトして生活していく。」(高橋さん)
「あはは!」(外山さん)「面白いじゃないですか」(吾郎)
「でもあんまり話しちゃうと・・・他の人が描いちゃうかも。」(外山さん)
「大丈夫です。今のはホントさわりの部分なんで。」(高橋さん)
「まださわりなんですか?」(吾郎)
「読んでみたいですね。」(外山さん)
結局編集者に見向きもされず漫画家の夢は諦めましたが、その後、
2000年代前半(20代前半)、漫画「ヒカルの碁」に感動しプロ棋士を目指しました。
「これ、凄く流行りましたよね。」(外山さん)
「ええ。これを読むと錯覚するんですよね、自分って天才じゃないかって。これを読むと錯覚します。」(高橋さん)
「『ヒカルの碁』は囲碁ですよね?」(外山さん)
「はい。でも囲碁はよく分からないんで、将棋だったら指せるので将棋でいいかなと。」(高橋さん)
「強かったんですか?」(外山さん)
「将棋自体は割と強かった。」(高橋さん)
「じゃあなんで辞めちゃったんですか?プロ棋士目指すの。」(外山さん)
「半年間くらい色々頑張って詰め将棋とかやってたんですけど、将棋センターに実際に行っておじいちゃんと対局したんです。指導対局くらいやってやるかと思って指してみたら、このおじいちゃんが尋常じゃない強さでむしろ指導対局をされていた側になってた。これはちょっと無理だなと思って。」(高橋さん)
「諦めちゃったんだ。相当なおじいちゃんだったかも知れないじゃないですか。」(吾郎)
「いや、それはホントにちょっと心残りなんです。そのおじいちゃんというのが結構恰幅が良くて白髪頭でネクタイが異様に長かったんです。」(高橋さん)
「え?!」(外山さん)
「あれ加藤一二三だったんじゃないか?」(高橋さん)
「ネクタイが長いといえば?!」(吾郎)「一二三さん?!」(外山さん)
「ホントだったとしたら、当時全然弱くなかったってことです。」(高橋さん)
「でも本当に一二三さんだったかどうか分からないじゃない。」(吾郎)
プロ棋士の夢も断念した高橋さんは、大学時代の友人に影響されて、初めて小説を書き賞に応募しました。これも20代前半の時のことです。
「バンド仲間に勧められて、一時期本をたくさん読んでた時期があったんです。『これ書けるんじゃないかなあ』と思って、書いてみました。」(高橋さん)
「何の小説を書いて応募したんですか?」(外山さん)
「エンタメ風の・・・まぁアレですね、変態小説を。」(高橋さん)
「そのストーリーは教えてくれないんですか?」(吾郎)
「あらすじは言っても良いんですが多分放送できないと思うので。止めといた方が良いかなと。」(高橋さん)
「放送できないですか。」(吾郎)
「放送できない上に、高橋の人格についても色々・・・誤解を受けそうなので。」(高橋さん)
「なんで変態小説を書こうと思ったんですか?ジャンルの中で。」(吾郎)
「多分その当時は変態だったのかも知れないですね。」(高橋さん)
「官能小説とは違う?」(外山さん)
「いや、官能小説ではなかったですね。」(高橋さん)
「ホントに変態だったんですね、じゃあ。」(外山さん)
「ホントに変態、と言われると・・・でも事実ではあるので。」(高橋さん)
「ちょっと読んでみたい(笑)」(外山さん)
「そういう面がある方が魅力的だし。」(吾郎)
しかし初小説は日の目を見ることなく、高橋さんは塾講師の傍ら音楽の道へ。ギター、ドラム、ボーカルなど様々なことに打ち込みました。
「バンドをやってらしたんですね。」(外山さん)
「高校生くらいからやってたんですけど。バンドというか楽器ですね。ギターとかベースとかピアノとかですね。」(高橋さん)
「ロックバンドですか?ジャンルは?」(吾郎)
「ギターがうるさい感じのバンドでした。・・・90年代だったら『NIRVANA』みたいな、お洒落な、ボサノヴァ調の・・・」(高橋さん)
「ボサノヴァ調が入ってるギターがうるさい『NIRVANA』って、全然わかんない。」吾郎がツッコみました。
「ちょっとすいません。ボサノヴァは違いました。」(高橋さん)
「ボサノヴァのギターはうるさくないよ。」(吾郎)
しかし、また小説を書きたい気持ちが強くなり音楽活動を休止。そして、
2014年(34歳)、「指の骨」で新潮新人賞を受賞し作家デビューしたのです。
「今度はもう変態小説ではなくて。」(外山さん)
「あ、そうですね、今度は変態ではなくて。」(高橋さん)
「指の骨」は「戦争を知らない世代による新たな戦争文学」と評価されました。
「なんで書こうと思ったんですか?だって最初は違う話を書こうと思ってたんですよね?大学生がグアムに行く話。」(外山さん)
「あ、そうです。でグアムでおじいちゃんと仲良くなる、って話だったんです。そのおじいちゃんが大学生に戦争の話をする、というような小説が良いかなと思ったんですけど、中身がそのおじいちゃんの話だけになったんです。」(高橋さん)
「なるほど。」(吾郎)
「変態から戦争へ、ですよ。」と外山さんが言うと
「今のフレーズいいですね。」(吾郎)
「キャッチコピーみたいですよ。」(高橋さん)
と二人が外山さんを褒めました。

さて、「送り火」を読み解く為のキーワードに戻ります。
2. 圧倒的な描写力
今回の芥川賞授賞の決め手になったのは臨場感溢れる圧倒的な描写力でした。選考委員の島田雅彦さんは

「一つ一つの言葉にコストを掛けているということがありありと伝わってきますし、言葉を使って別世界を構築していくフィクション本来の醍醐味を十分に示している快作ではないか」

と評しています。
ここで選考委員も絶賛した描写力がよく分かるくだりを外山さんが朗読。

ある日の学校帰り、この民家を通りかかると、老婆に声をかけられた。
おやつがあるから、食べていきなさいという。
玄関の木戸を開けると、土間があり、居間には囲炉裏があった。
囲炉裏など昔話の挿絵にしか見たことがない。
天井から吊された自在鉤には、挿絵に見たのと同じ、魚の形の横木が吊してある。囲炉裏の中央では、黒炭がほんのりと赤く染まっていた。
炭で餅でも焼くのかと思ったが、老婆は何やら、白いスポンジのようなものを竹串に刺し、囲炉裏へ並べていく。
「マシュマロお食べ。」
炭火で炙ると、マシュマロは表面がキツネ色に焦げた。
老婆が手渡す竹串から、一つ頬張る。外側は歯触り良く香ばしく、内側は柔らかく甘く、上等な焼き菓子を食べているようだった。
「酒も呑み。」
老婆は囲炉裏に挿した竹筒から、白く濁った酒を湯呑みに注いだ。湯呑みを受け取ると、匂いでそれが甘酒だと分かったので、躊躇わずに一口呑んだ。
酒麹の香りに、仄かに青竹の香りが混じっており、また囲炉裏で人肌ほどに温まっているせいか、少し酔った気分にもなった。

囲炉裏で老婆がマシュマロを焼く、というところにいい意味で違和感がありますね。
「囲炉裏で餅を焼くのはありそうなんで、餅だと面白くないと思って、はい。」(高橋さん)
「それでマシュマロ。」(外山さん)
「マシュマロの方がなんか・・・これ学校帰りだと思うんですけど、マシュマロ食いたいんじゃないかな、と。」(高橋さん)
「あ、この子が。」(外山さん)「そうです。」(高橋さん)
「土間があって木戸があって、みたいな、そういう風景の場所に良く行かれていたとか?例えば田舎がそうだとか。」(外山さん)
「そうだね、農具とかいっぱい出てくるもんね。普通知らないよ。」(吾郎)
実家が農家なので、農具は色々見たことはあった、と高橋さん。高橋さんのご実家は小説の舞台と同じ青森で、小説のクライマックスシーンは高橋さんが幼少期に見た風景を元に書いたのだそう。
「じゃあ舞台を青森にしたのは、ご実家が青森にあるから?」(吾郎)
「ええ・・・別に青森でなくても良かったんですけど、お祭りを作中で書こうと思ったので。実家の近くで変なお祭りをやっていたので参考にしました。」(高橋さん)
「実家の近くのお祭りというのはねぶたではない?」(吾郎)
「ねぶたよりももっと土着的な感じですね。」(高橋さん)
「ちょっと怖い?」(吾郎)
「まあ、ああいう集落の祭りというのはちょっと異常ですから。」(高橋さん)
「そういうことなんだ。僕は見たことないなあ。」(吾郎)
田舎の閉鎖的な人間関係と土着性。吾郎は接したことがない世界かも知れませんね。

高橋さんは最初は緊張した様子でちょっと斜に構えた感じもありましたが、段々気持ちがほぐれてきて色々なお話をして下さいました。いつも思うのですが吾郎と外山さんはゲストの方の心を無理せず開かせますね。率直でしかもいつも礼儀正しいからでしょう。
これからもずっと続けて欲しい番組です。


拍手ありがとうございます
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GORO | コメント(0) | 2018/10/02 11:56
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