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松本零士漫画の極意 (「ゴロウ・デラックス」 10/27)

伝説の漫画家シリーズ第5弾松本零士先生の後編です。

まず「銀河鉄道999」第1話を吾郎、外山さん、AD山田くんとで完全朗読しました。
物語は2212年の地球が舞台。母親を機械伯爵に殺された鉄郎が、謎の美女メーテルと共に銀河鉄道999に乗り、母の遺言通り機械の体をただでくれる惑星へと旅立つまでが描かれます。
鉄郎の母を殺された悲しみ、機械伯爵に復讐する怒り、旅立ちへの希望。吾郎の「おかあさん」の叫びが真に迫っていて思わず涙が出ました。それから今回は山田くんの機械伯爵役の朗読も良かったです。
(因みに、鉄郎は機械伯爵に復讐してから999に乗るんですね。私は思い違いしていました。)

今回は課題図書を基に、松本先生の漫画の極意をたっぷり伺います。

課題図書 : 「零次元マンガの描き方 松本零士」 松本零士

その1. 【SFにおけるリアリティ篇】
松本先生の漫画では銀河鉄道999や宇宙戦艦ヤマトなど、宇宙を舞台に架空の乗り物が登場します。読者にリアリティを感じてもらうためには、架空の世界だからこそ徹底的な取材と設定作りが大切なのだそうです。
「宇宙戦艦ヤマトだと、例えばメカニックな部分ではどういった取材をするんですか?」(吾郎)
「私が本郷三丁目の山越館に下宿していた時、隣の部屋にいたのが猿渡元海軍中佐…戦艦武蔵を護衛していた重巡洋艦最上の、副艦長だったんですよ。で私の部屋にやってきてカーテンにピンで留めてあるものを見て『船好きなのか?』『好きですよ』と。で私が描いているものも見せたら『よし』と言って戦艦大和の設計図をドスンと1箱くれたんです。」(松本先生)
その方は終戦の時に取り上げられる前に持って帰ったのだそうで(そんな国家機密、普通は持ち出せませんよね)、
「私は戦艦大和の構造を全部知ってたんです。だから宇宙戦艦を依頼された時に、全部図面で知っててああいう設定ができた。」(松本先生)
外から見える第一艦橋、第二艦橋だけでなく、船底にある第三艦橋射撃策定盤室まで描くことができたのだとか。
「SFだと完全にイマジネーションの世界だけでいいのかなと思っちゃうけど、やっぱりそういうリアリティというものも必要なんですね。」(吾郎)
「必要です、リアリティというのは。一番大切なのは『何のためにこれを描くのか』ということ。次に大切なのは『いつの時代の何を描くのか』を自分で選定し歴史をキチンと知った上でその物体を描くこと。」(松本先生)
「何でもかんでもイメージで描いてはいけないんですね。」(吾郎)

極意その2.【絵のディデール篇】
「999」や「ヤマト」など松本作品には非常に細かく描き込まれた計器類がしばしば登場し独特の雰囲気を作っています。これらは海外では「レイジメーター」と呼ばれ注目を集めているのだそうです。
「先生といえばレイジメーターですね。」と外山さんが言うと先生は腕時計を手に取り「私はこういう時計が好きでしてね」と切り出しました。
「それ、飛行機の時計ですよね?」と吾郎が訊くと
「航空時計ですよね。高度や速度が分かる…。その前から飛行機のメーターとかが好きだった。」と先生。目盛が付いたものが好きだったそうです。
「コックピットのメーターとか何か憧れがある。僕も好きです。」と吾郎も目を輝かせました。自分の好きな物(時計など)を取り入れて描写に生かすのが松本先生の極意なのです。
さらに、とても細かく描き込まれた未来の街並も松本作品の特徴の一つですが、それにはこんなエピソードも。
「僕はビルをいっぱい描いてる。こういうビルが憧れだったんです。で東京に来てビルを見上げた時に『俺は未来を描いてたんだ』と思って喜んでたんですよ。そしたら(高層ビルの)設計者の一人に2、3年前に会いましてね、『俺はあんたの漫画を小学生の時に見て、それに憧れてあのビルを建てた。』と。そういう人が現れたんですよ。なんか知らないけど相互に関係があるんですね。私の絵を見て作ったビルだと言うから似たものもいっぱいあるんです。」(松本先生)
吾郎はビルの写真集(?)と見比べて「確かに東京の高層ビルですよね」と納得しました。
「それがこうなるだろうといろいろ考えて、上が出っ張っていたり…」(松本先生)
「ええ、こういうのありますよね。」(外山さん)
非常に興味深いお話ですが、この時私の目はソファに座った吾郎の膝にロックオン。実はメーテルの衣装を着たままだったのでスカートからおみ足が大胆に見えていたのです。眼福…。

極意その3.【美女篇】
ここで、課題図書から先生の美女に対するこだわりが書かれた部分を吾郎が朗読。

子供の頃から絶世の美女を描きたいと思っていた。
それも醜男が美女を好きになったら、その美女も男の気持ちに応えてくれるような物語のヒロインとして。
私が理想とする女性は美しくて強い女性だ。
傷ついた者を癒すときには天使のように優しく、大切な人を守ろうとするときには戦士のように雄々しい。
そんな両面を持った女性が好きだ。


「みんな好きですよね。」(吾郎)「そうですよね。」(外山さん)
「私もたくさん映画を見たり小説を読んだり漫画を見たりしたからその影響もあるんですが、そういうのが好きなんですよ、強いのが。」(松本先生)
実はメーテルには原型があります。それは松本先生の1968年の作品「セクサロイド」に登場する、ユキという人間の性機能を持ったロボットです。先生は元々少女漫画家でしたが、この「セクサロイド」から青年漫画誌に連載を持つようになりました。
なぜ、突然セクシーな美女を描くようになったのでしょうか?
「実は少女雑誌から男の漫画家が全部クビになりましてね。少年誌は重鎮が押さえているから出番がない。男の漫画家の仕事がなくなった時に青年誌が生まれた。で私に青年誌から依頼が来て表紙から全部描いた、「セクサロイド」も。それが私を助けてくれた。」(松本先生)
「メーテルの前ですもんね。」(吾郎)「こういう顔を描きたかった。」(松本先生)
「ほんとうにキレイですよね。僕こういう女性がタイプですもん、先生が描く女性。」(吾郎)
確かに男性の理想をすべて盛り込んだ感じの女性ですよね。ハードルが高すぎる気もしますが。

「女性の髪を長くしたのはヌードの時に局部を隠すため。表現上それはとても大事な事ですから。」(松本先生)
「メーテルなんかちょっとスッポンポンになっちゃう時がありますもんね(笑)。温泉にも入ってましたもんね。」(吾郎)
「そう。長い髪の毛だから隠れるんですね。衣装と同じなんです。」(松本先生)
メーテルの髪をそういう風に見たことがなかったので新鮮な驚きでした。
そこで外山さんから嬉しいお知らせが。
「今日はですね、先生が吾郎さんの前で美女を描いてくださるという…。」
「ほんとですか?!」吾郎のテンションも一気に上がります。

そして松本先生がメーテルの描き方を実演してくださいました。
1本の油性ペンで額から鼻、口元、目と睫毛、髪の毛、首元のポンポン、帽子の順で描いていきます。目と睫毛はペンを細かく動かして奥行を出し、長い髪は一気に描き、ポンポンは動物の毛の感じを出すためペンを押しつけながら太い線で、と描き分けていくと、メーテルの横顔が出来上がりました。左向きの顔でも右向きの顔でもどちらでも描けるそうです。描きあげたメーテルに日付とサインを入れながら先生はおっしゃいました。
「松本零士というのは終わりなき士(さむらい)という意味。零、マルは永遠に0でしょ。止まらない。だから終わりなき士なんです。」
「そういう意味で零士にしたんですか?」(外山さん)
「そうです。でもペンネームにすると言ったら、親父が『親がつけてやった名前が一番いい』と言って…もう1枚ないですか?もう1枚描きます。」先生は話しながらも決して手は止めません。
描き上がった右向きメーテルの色紙を吾郎は自分の顔の横にもってきました。自分もメーテルの黒い服を着ている事に気がついたようで
「メーテル忘れてた。」と一言。
その間に先生は左向きのメーテルも描いてくださいました。並べると2人のメーテルが向かい合っているようでとても素敵でした。

そこへ、
「間もなく発車時刻が近づいて参りました。」
と言いながら、999の車掌さんのコスプレをしたAD山田くんが入ってきました。ちょっと緊張の面持ちで披露した消しゴムはんこは
上下左右を短い線路に囲まれた鉄郎。黒い紙に金や銀のインクで押してあって、今までにない雰囲気の消しゴムはんこに仕上がりました。これには松本先生も感心しておられました。

戦艦大和の設計図をすべて読み、アニメ制作の装置を手作りするなど、まるでエンジニアのような松本先生。松本ワールドの秘密はここにもあるように思いました。


拍手ありがとうございます




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