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ドラえもんと綾辻行人さんと筋肉少女帯と (「ゴロウ・デラックス」 6/29)

オープニング。
「今日は2018年本屋大賞受賞者の方がゲストです。歴代の受賞作の中で断トツの最高得点だったそうで。」(外山さん)
「楽しみですね。」(吾郎)

課題図書 : 「かがみの孤城」 辻村深月 (ポプラ社)

学校での居場所をなくした中学生7人が鏡の中の不思議な城で出会い、“なんでも願いが叶う鍵”を探すという物語です。
「どうでした?」(外山さん)
「僕大好きです」(吾郎)「私も!」(外山さん)と二人は早くも興奮しています。
「もうまた好きな本が増えました。」(外山さん)
「そう。登場人物はみんな中学生だけど、世代を超えて色んな方に愛される小説なんじゃないかな。」(吾郎)
「私最後の方はずっと大号泣でした。」と外山さんが本のページをめくりながら言うと
「僕だってそうだよ。」と吾郎が唇をとがらせて言いました(←そこで張り合ってどうする・笑)。

辻村深月さんが登場すると吾郎が「本屋大賞おめでとうございます」と花束を手渡しました。ゴロデラ恒例になったこのシーンはいつ見ても良いですね。
辻村さんは2004年「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞し作家デビュー。2011年「ツナグ」が吉川英治文学新人賞を受賞し松坂桃李さん主演で映画化されました。更に2012年「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞。そして今年4月、全国書店員が「いちばん!売りたい本」に授与される「本屋大賞」に選ばれたのが「かがみの孤城」です。

「本屋大賞を受賞された感想はいかがですか?」(吾郎)
「私、本屋大賞は4回目のノミネートだったんですけど、書店員さんたちがより身近になって。別格に遠いと感じていたのが実はアットホームな賞だと思いました。」(辻村さん)
「それはノミネートだけでは気付かなかった事なんですか?」(吾郎)
「ですね。本屋大賞はノミネートを喜ぶものだと思っていたので…。」辻村さんははにかみました。授賞式当日書店員さんたちが持ってきてくださった手作りのPOPは辻村さんの宝物になったそうです。
「書店員さんたちが売りたい本を選ぶ賞なんですけど、もっと言えば『この本を必要とする人がいる』と書店員さんたちが思ってくださったんだなあ、と思って、この本の主人公たちに良かったなあ、って気持ちになりました。」(辻村さん)
「かがみの孤城」の主人公はある事がきっかけで不登校になってしまった中学生、こころ。まずはそのこころの心情が描かれた部分を吾郎が朗読。

たとえば、夢見る時がある。
転入生がやってくる。
その子はなんでもできる、素敵な子。クラスで一番、明るくて、優しくて、運動神経がよくて、しかも、頭もよくて、みんなその子と友達になりたがる。
だけどその子は、たくさんいるクラスメートの中に私がいることに気づいて、
「こころちゃん、ひさしぶり!」
と挨拶をする。
周りの子がみんな息を呑む中、
「前から知ってるの。ね?」
と私に目配せをする。
みんなの知らないところで、私たちは、もう、友達。
トイレに行く時も、教室移動も、休み時間も。
だからもう、私は一人じゃない。
真田さんのグループが、その子とどれだけ仲良くしたがっても。
その子は、
「私はこころちゃんといる」
と、私の方を選んでくれる。
そんな奇跡が起きたらいいと、ずっと、願っている。
そんな奇跡が起きないことは、知っている。

吾郎は読み終わるとはぁ、と息を吐いて「ここ、大切なところですよね。」といいました。
実は不登校の描写には、辻村さん自身の10代の頃の体験や葛藤が活かされているそうです。
「学校が楽しくて楽しくてなんの憂いもなく毎日行けていた、という人はあまりいないと思うんです。みんな行きたくない日があって当たり前だし嫌いな教科もあるし。そんな中で一日一日積み重ねていったものが365日になってるという人が多いんじゃないかと。その子達を描くことによって、学校というものが持ってる窮屈さとか楽しいばかりじゃないところを描けるのではないかと思って、不登校の子を主人公にしました。」(辻村さん)
「辻村さん自身はどんな中学生だったんですか?」(吾郎)
「私自身は不登校の経験はないですし、友達もいたし、楽しそうに映っている写真もいっぱいあるんですけど、だけど、中学時代が一番辛かったです。小学校の頃はまだ大人の言うことを無条件に信じられる。信じている方が守られると思うんですね。で高校生になると自由になって大人に反発するというのも分かりやすくなるんですけど、中学って大人と子どもの境目で、当時作家になりたいと思っていたんですが、作家なんて見たこともないし、自分が将来どうなってるかも分からない、一番複雑だった時期でした。」(辻村さん)
「僕は中学2年生だったから、仕事始めたの。行けなかったんですよ、忙しくて。ある意味不登校なんだけど。」(吾郎)
「ああ、でもいいですね、そういう子も作ればよかった、行きたくても行けないっていう。」(辻村さん)
「ははは。でも独特だったなあ。午後からちょこっと行けたりして校庭を一人で歩いている時とか。門を入って行くとみんなに見られたりして、(テレビに出始めて)ちょっとザワザワし始めてた時なので。ちょっとした優越感もありながらもこっぱずかしさもあって…だから自分の中学生の時のことも含めて色んな事を思い出しちゃった。」(吾郎)
「そうですね。」外山さんも辻村さんも興味深そうに聞いていました。

自分の部屋に引きこもり続けるこころに、ある日事件が起こります。その一節を外山さんが朗読。

こころの部屋には、大きな姿見があった。
自分の部屋をもらってすぐにつけてもらった、ピンク色の石が枠を囲った、楕円形の鏡。
音のほとんど聞こえないテレビの放つ光が、今日はやけに眩しい。
テレビを消してしまおうと、ふっと、何気なく顔をあげたその時、こころは
「え?」
と息を呑んだ。
テレビは、ついていなかった。
その代わりに部屋で光っていたもの、それは入口近くにある鏡、だった。
嫌だ、怖い、と思った次の瞬間、体が光に包まれた。
「ねえ、起きて」
「ねえ、起きてってば」
狼の、顔。
縁日で売られるような、狼の面をつけた女の子が立っている。
城が建っている。
立派な門構えの、まるで西洋の童話で見るような城が。
「おっめでとうございまーす!」
「安西こころさん、あなたはめでたくこの城のゲストに招かれましたー!」

「他の世界に行く時に鏡を使ったのはなぜなんですか?」(外山さん)
「まずこころの気持ちを考えた時に、周りがみんな敵だらけで外に出て行くの怖いだろうなと思ったんですよね。で中学生の日常って学校と家の往復くらいで、他はせいぜい塾くらい。だから昼間学校に行かないという選択をしてしまうと、どこにも行ける場所がない。そこからどうしようかと思ったら、怖いんだったらもうこっちから迎えに行こうと。鏡だったら誰の家にもあるので、だったら鏡を光らせてそこから迎えに行こう、と考えました。」(辻村さん)
光る鏡のお陰で、実生活の悩みから離れ冒険の世界へ行くことができるこころたち。これには辻村さんが学生時代にあるものに救われた経験が活かされているそうです。
「辻村さんは元々本を読むのが好きだったんですか?」(外山さん)
「中学時代自分の居場所がないと感じた時に、私の部屋の鏡は光らなかったけれど、代わりにあったのが本の存在なのかなと思っていて。いろんな所に本に連れて行ってもらいました。」(辻村さん)
そして一番好きで影響を受けた本は、藤子・F・不二雄先生の「ドラえもん」だとか。
「へぇー、ドラえもん!」(吾郎)
「ドラえもんはもう、嫌いな人はいないじゃないですか。」(外山さん)
「でも意外っちゃ意外だよね。一番が漫画って。」(吾郎)
「今日は辻村さんの執筆部屋の写真があるんです。」外山さんがそう言って写真が映し出されると、
「ああ!」(吾郎)
「ほら、ドラえもんが沢山あるんですよね!」(外山さん)
本棚にはドラえもんと藤子・F・不二雄先生の作品がずらりと並び、ドラえもんやドラミちゃんのフィギュア(?)もいくつも置かれています。
「色紙もありますね。」(外山さん)
「むぎわらしんたろう先生に、直木賞を獲った時に頂いたものです。」(辻村さん)
因みに、今回の本屋大賞のお祝いとして、むぎわら先生から新しいドラえもんの色紙をプレゼントされたそうです。良かったですね。
2005年に出版した「凍りのくじら」では各章のタイトルをドラえもんのひみつ道具にしたほど、辻村さんのドラえもん愛は深いのです。
「これは私のデビュー三作目だったんですけど、ドラえもんが好きって言っている作家さんたちを見て、私もそろそろドラえもんの事が好きだって分かる作品を書こう、と。」(辻村さん)
「ドラえもんの事が好き、って言ってる作家さんが羨ましかったの?(笑)」(吾郎)
「ドラえもんについて答えてる作家さんがすごい憧れだったんです。こうやってドラえもんについてテレビでしゃべれる立場になるなんて、って。」(辻村さん)
「ドラえもんのどんなところが好きなんですか?」(吾郎)
「かがみの孤城もそうなんですが、すごい影響を受けているのは日常と不思議が地続きなところですね。畳の裏が宇宙だとかタイムマシンの入り口が引き出しだとか。日常のすぐ近くにファンタジーやSFの世界があって不思議なことがあるかもしれない思えるところが大好きだし。ドラえもんはみんな大好きで、たぶん家の思い出と結びついてることが多いと思うんですよ。毎週金曜日に見る時にこんな食卓だったとか。」(辻村さん)
「あー!思い出した!ちょっとほろ苦いお父さんのビールの香りとか。」吾郎が唸るように言いました。
「あー分かります。」と辻村さんは頷いて「それからドラえもんのカップで歯磨きしてたとか、初めて観に行った映画が『ドラえもん』だったとか。」
「ああ、それもあるね。」今度は吾郎が頷きました。
今思い出しても色んな思い出がくっついてくる、と辻村さん。そこに国民的漫画の底力を感じるそうです。

学生時代に辻村さんが救いを受けた本もあります。
それは綾辻行人さんの「十角館の殺人」。ある孤島を訪れた大学のミステリー同好会のメンバーが次々と殺されていくミステリー小説です。
「小学校6年生の時の読んだんですけど、真相が分かるところで驚きすぎて本を手から落としてしまって。すごいものを読んだと思って、隣の部屋にいた妹にいきなりネタバレで全部喋るという(笑)。」
辻村さんはこの時初めて「驚きって感動になる」ことに気付いたそうです。
「これ(かがみの孤城)だってねえ、真相を知って何人の人が感動したか。」(吾郎)
「あ、嬉しい。」と辻村さんはにっこり。
それ以来綾辻さんの大ファンになり、ペンネームも
「綾辻さんの『辻』の字を勝手に頂いて、『深月』も綾辻さんの小説(『霧越邸殺人事件』の登場人物から頂いたんです。」
「ああそう、完全にペンネームなんですね。」(吾郎)
「で勝手に頂いたんですけど、デビューする前後くらいに綾辻さんから『まあいいでしょう』と言われたので、それを勝手に了承だと思って今まで活動してきたんです。」(辻村さん)
「いや、嬉しいと思いますよ。」(吾郎)
「あまりに大好きだったので、高校生の時に綾辻さんのサイン本が当たります、という…綾辻さんに一言メッセージを送ってくれたら抽選で3名様にサイン本が当たるという企画があって、サイン本があったらそれをお守りにしてこの先作家になりたい自分が頑張れるんじゃないかと思って100枚ハガキを出したんです。100枚ハガキを出したらサイン本を無事にもらえたんですけど、その時がちょうど世の中に“ストーカー”という言葉が出始めた頃で(私ストーカーみたいだな)と我に返って、今思うとダメ押しなんですけど、出版社に「私はストーカーではありません」と手紙を出したんです。」(辻村さん)
「不安になっちゃったんですね、ストーカーだと思われたらどうしよう、って。」(外山さん)
「でも綾辻さんは『よくもこんなにたくさんのハガキを、とは思ったけど、ストーカーだなんて思ったことなかったですよ』と言って、お仕事場の住所を教えてくださって『本の感想とかあったらこちらまでどうぞ』って言ってくださって。それからお手紙のやり取りを何回かさせてもらったんです。」(辻村さん)
「へぇー…」(外山さん)「嬉しい…」(吾郎)
「でも最初にお返事を頂いたときに見た文面が短いものなんですけど、私がそれまで本の世界で見ていた綾辻さんの後書きとかエッセイとかで書かれている文体と同じで、短い文章の中でもこの作家さんが自分に書いてくれたものだと分かる。これが作家性なんだと思って。」(辻村さん)
「出るんでしょうね。」(吾郎)
この体験を通じて、今まで身近に感じることのなかった作家という存在が「現実にいるんだ」と思えたという辻村さん。それから小説を書いていくときに、綾辻さんからお手紙を頂いたことがすごく励みになったそうです。
「それはデビュー前ですよね。それから小説を書く上でどんな影響を受けたんですか?」(吾郎)
「今回の『かがみの孤城』もジャンル分けが難しいと思うんです。単なるファンタジーではないし、ミステリーとかSFという一方向じゃないし、じゃあ青春小説かというとそれ以外の部分もあるし。ただこういう形になっているのは、私が綾辻さんが大好きなので何を書いてもミステリーになってくる、そこは影響を受けているところですね。綾辻さんのミステリーとドラえもんからもらった少し不思議の世界観がきっと私の基本の部分にあるんだろうなと思います。」(辻村さん)

ここでまた辻村さんの執筆部屋の写真を拝見。CDがたくさん積み上げられています。
「執筆中に聞いている音楽の写真です。」(辻村さん)
「筋肉少女帯?!」(外山さん)「意外ですね。」(吾郎)
「私大槻ケンヂさんが大好きで、綾辻さんとかドラえもんと同じくらいに大槻さんの歌詞世界とか小説が大好きなんです。大体大槻さんの筋肉少女帯か特撮の曲がかかってる。」(辻村さん)
「結構激しい曲ですね。」(外山さん)
「そうですね。音楽をかけるとテンションが入ってくる感じなので執筆中に音楽はあってほしいです。」(辻村さん)
一見おとなしそうな辻村さんが激しい音楽がお好きとは意外ですね。

AD山田くんの消しゴムはんこは本屋のPOP風。「全ての戦う人に捧げる」というキャッチフレーズが付いています。真ん中の鏡の中のお城が沖縄の首里城なのが山田くんらしかったです。

番組後半では辻村さんが自分の好きなものについて熱く語ったのが素敵でした。好きなものがたくさんあると活き活きしますよね。
それにしても「屍人荘の殺人」の今村昌弘さんも綾辻行人さんが大好きとおっしゃっていて、綾辻さんに興味がわいてきました。


拍手ありがとうございます
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