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文壇の名伯楽 (「ゴロウ・デラックス」 5/11)

オープニング。
「吾郎さん、最近ブログやツイッターをされてますよね。文章書くの楽しいですか?」(外山さん)
「楽しいですよ。」(吾郎)
「読んでで思う事があるんですけど、言って良いですか?・・・小説家デビューを狙ってません?」(外山さん)
吾郎は固まりましたがその真意は・・・?!

「芥川賞を受賞された石井遊佳さんと若竹千佐子さんが先日いらっしゃった時、同じ先生に小説を習っていたというお話がありましたよね。今日はなんとそのすごい先生が来て下さいました。」(外山さん)
その時VTRでコメントをくださった根元昌夫さんが今回ゲストとしてスタジオに登場です。
「穏やかな感じの方ですね。」吾郎はちょっとホッとしたようです。
根本さんは文芸誌の編集長として吉本ばななさん、島田雅彦さん、小川洋子さん、角田光代さん、瀬名秀明さんなど錚々たる作家のデビューを指南。現在は小説講座の講師を務め、教え子である石井さんと若竹さんが芥川賞をダブル受賞したこともあって講座には受講希望者が殺到しているそうです。

課題図書 : 「実践 小説教室」 根元昌夫

「先生、なんと言っても若竹さんと石井さんが芥川賞同時受賞・・・正直受賞するって思ってたんですか?」と外山さんが訊くと
「思ってました」と根本さんは笑顔で即答。「僕はね、若竹さんは100%獲れると思ってたんですよね。」
「ほー!面白い!」(吾郎)
「石井さんも。ダブル受賞も20~30%位あるなと思ってたんです。教室で若竹さんは必ず獲るって言ってたので・・・」(根本さん)
「言ってたんだ、生徒の前で。」(吾郎)
「ええ。だから獲って本当にホッとしたという感じです。」根本さんは本当に嬉しそうです。
「先生は編集者だったわけですが、その時に芥川賞受賞作品を担当されたことはあるんですか?」(外山さん)
「担当者としては10連敗。(ノミネートはされたけれど)それ位落ちてきたわけです。」(根本さん)
「そんな簡単に獲れるものじゃ無いですよね。でも今回ダブル受賞ですものね。」(外山さん)「すごいですね。」(吾郎)
「僕が獲ったわけじゃ無いですけどね。」と言いながらも根本さんは終始笑顔です。
「どんな指導をされてきたんですか?」と吾郎に訊かれ、根本さんは若竹さんの「おらおらでひとりいぐも」に与えたアドヴァイスについて話して下さいました。
「最後にお孫さんが訪ねてくる話、あれは元々は無かったんです。でも最初桃子さんとお孫さんの話で始まるので、最後も繋がる形で娘さんかお孫さんを出した方が良い、と言ったんです。」

現在カルチャーセンターや大学で12の小説講座を持っている根本さん。その中でも作家デビューを目指す人達が集まる、最もハイレベルな講座を番組は取材しました。11名の生徒さんの中には15年通っている人や既に作家デビューしている人もいます。一体どんな指導がされているのでしょうか。
根元流小説講座は、生徒が自由に小説を書きそれを事前にお互いが読んできて批評しあう「合評会」スタイルです。根本先生は次々生徒さんを指名し、生徒さんは自分の感想を遠慮無く言います。厳しい批評が飛び交い、時に正反対の意見が出ることも。でもこれが根元流小説講座最大のポイントなのです。根本さんによれば
小説とは読者の数だけ読み方が異なり、様々な読み方に幅広く耐えられるものが良い小説
だからです。その為生徒は自由に批評をぶつけ合い、作者はその中から問題点を見つけ出して修正していきます。このような合評を数回から数十回繰り返し、生徒達は小説を完成させて文学賞に応募するのです。因みに2時間で生徒全員の合評をして授業料は4000円だそうです(安い!)。

ここからは優れた小説を書くためのテクニックを学びます。まず課題図書から小説を書く上で一番大切なことについて書かれた部分を吾郎が朗読。

私が多くの小説を読んできて実感しているのは、「いい作品の書き出しはいい」ということです。
それだけに作家たちは、おそらく相当考えて書き出しの一文を書いていると思います。ぱっと思いつくこともあるかもしれませんが、多くの場合、最初の一文が決まるまで何度も何度も書き直しているのではないでしょうか。
「初めの一文が出てこないと続きが書けない」とは、多くの作家が語っていることです。


「『メロスは激怒した』とか『吾輩は猫である』とか有名な書き出しがありますが・・・」(吾郎)
「最初の一行がないと二行目が来ないんだけど、全部完成した後でもう一回最初の一行を直すっていう。だから最初の一行は大切だし良いんですよね、良い作品の一行は。」(根本さん)
小説で一番大切なのは“書き出し”。「書き出し名文」とはどんなものなのでしょう。
根本さんが担当していた島田雅彦さんのデビュー作「優しいサヨクのための嬉遊曲」。恋愛もサークルもうまくいかない男子大学生の混沌とした日々を描いた青春小説の書き出しはこうです。

待ち伏せは四日目に入った。


「いいですねぇ!」吾郎は唸りました。「これ好きですよ。作品も好きだし書き出しも好きですよ。」(吾郎は島田雅彦さんの小説が好きと公言していて、昔雑誌で島田さんと対談したこともありました。)
「なんかミステリーっぽいですよね。」と外山さんが言いましたが、決してミステリー小説ではありません。
「何を待ってるんだろう?これから何が始まるんだろう?という書き出しですよね。じゃあ3日間何してたんだろう?って気になりますよね。でそれに続くのが、『オーケストラ団員である彼女はもうすぐ、この場所に現れるはずだった。練習を終えた彼女はまっすぐ家に帰るため五時にここを通る計算になる。』となって、あれ?と・・・」(根本さん)
「あれ?ミステリーじゃないぞ、と。」(吾郎)
「みどりさんを待ち伏せしている、というとても良い書き出しですよね。」(根本さん)
次の「書き出し名文」は荻野アンナさんの芥川賞受賞作「背負い水」。30代の女主人公と3人の男の恋愛小説ですが、その書き出しは、

真っ赤な嘘というけれど。嘘に色があるならば、薔薇色の嘘をつきたいと思う。


「これだ!と思っただろうね。絶対思ったはずだよ。引き込まれますよね。」(吾郎)
「3人の男と付き合ってる女の人がいろんな嘘をつく訳なんですね。で男の人も嘘をつく。これこそがテーマであり中身ですよね。」(根本さん)
「テーマが全部この書き出しに表われている。秀逸な。」(吾郎)
「ちょっと圧倒されちゃいますよね。」(外山さん)

「それで、今回は事前に先生から私たちに、小説のプロットを考えてくるように、という宿題が出ていたんです。」(外山さん)
「ちょっと自信はないけれども、考えてきて。何となく構想は。」(吾郎)
収録の1週間前、二人は根本先生からオリジナル小説のあらすじを考えてくるようにとの宿題を出されました。そして根本先生のお話を踏まえて、そのオリジナル小説の書き出しの文章に挑戦します。
「それを今回は講評して頂けるということなので。そんな機会ないですよ。」(吾郎)
「そうですね。本当はこっそり講評して欲しいですけど。」(外山さん)
根本先生の前で原稿用紙に向かう吾郎と外山さん。テーマはラブストーリーとミステリー。2本の小説のプロットを考えたわけです。
外山さんのラブストーリーは

《「肉じゃがのじゃがいもは、固い方が好き?それとも崩れてるくらいドロドロに煮込んだ方が好き?」
と彼女が聞いた。》

「かわいい」(吾郎)
「多分男性の胃袋を掴む事で恋愛して、そして失敗してきた女の人の話ですよね?一行目としてはすごく良い書き出しだと思いますよ。・・・ここに続けるとすると、また聞くのね、『目玉焼きは塩?醤油?ソース?ケチャップ?』。そうすると気を遣いすぎてうざい女性の感じが出て、やっぱりこれで失敗してきたんだな、と分かる。」(根本先生)
というわけで、この文章は「センスあり直しなし」との高評価。
一方吾郎は外山さんが書き終わっても黙々と鉛筆を動かしていました。真剣に原稿用紙を見つめる横顔のかっこいいこと!(←今はそこじゃない) そして出来上がったラブストーリーの書き出しは

《「美しいダイヤモンドだって気づかぬうちに汚れてしまってるものなんだよ」
私の体温によって微かな熱を帯び、日々の生活のなかで少しずつ油膜が付着してしまったネックレスを、彼はそっと私の首に手を回し後髪に隠れたその留め具を探りあて、自分のものと一緒に洗剤を入れたコップへ一気に沈めて見せた。二つの輪っかがガラスの底に到着したことを知らせる小さな振動を確認すると、私は呟いた。
「それってなんだか恥ずかしいよ・・・」
ガラスの向こう、青く滲む水の中で漂う二人のネックレス。》

「小説家みたい・・・。」(外山さん)
「これ、書き出しを超えちゃってるんですけど(字数は300字近い)、多分長く先まで書いた方が先生も講評しやすいのかな、と。どういう事かというと、少し生々しさ・・・人の脂とか細胞とかが好きな人のと一緒に交わっていく感じ・・・が恥ずかしくも喜びを感じたりもする。多分女性が一番やられたくないことだと思うんですね、一緒に洗浄するって。」(吾郎)
「いや、すごく良い書き出しだと思いますよ。それでね、『油膜が付着してしまったネックレスを』の所が長過ぎるから『ネックレス。』でいい。」(根本先生)
「ああ、なるほど。僕今思ったんですよ、読んでで読みづらかったんです。」(吾郎)
長すぎる文章は途中で切ると良いんですね。
更に根本先生は細かな言葉遣いを変えるようアドヴァイス。そうすれば
「男性と女性の間にはちょっと齟齬があって、これからそういう物語が展開するんじゃないかという、とても良い書き出しです。」と褒めて下さいました。
「先生すごい。」(外山さん)
「こんなにダメ出しがあるって、恥ずかしいけど嬉しいよね。」(吾郎)
吾郎の書き出しは大筋では好評でしたが細かい赤が入りました。
続いて外山さんのミステリー。

《冬に露天風呂に入ると家に帰りたくなる。だから来たくなかった。》

「ああ!いいですねえ。いい!いい!」吾郎は目を輝かせました。
「これは友達と・・・多分5人くらいかな?温泉旅行に行ったらそのうちの一人が殺されるという・・・」(根本先生)「はい、仲間の一人が殺されちゃう・・・」(外山さん)
「これはタイトルも決まっちゃうよね、『女子アナ温泉殺人事件』とかね(笑)。ベストセラーになるかも知れない。」(根本先生)
「何が始まるか想像が付くよね。」(吾郎)
「上手ですよ。いろんな可能性が広がる良い感じの書き出しだと思います。」と根本先生は絶賛。
そして注目の吾郎のミステリー書き出しは

《「なだらかな曲線を描く額の麓にある漆黒の瞳は、先端までメリハリのある横顔の印象の中に静かに存在している。
彼女の美しい横顔に見惚れている時間が僕は好きだ。
しかし、そんな物静かな彼女からは想像も付かぬ過激な一言に僕は、一瞬で凍り付いた。
「あなたは美しき世界からやってきたクソ野郎ね。」》

「すみません、最後映画の宣伝で。」吾郎はちょっと恥ずかしそうに笑って、
「これがすごく良いタイトルなんですよね。だから引用してしまいました。自分の映画だから良いかな、って。」と弁明(?)しました。
「自分のすごく好きな女性が横にいる、ってイメージで書き出したんですけど・・・。」という吾郎の説明に根本先生は頷いてから
「細かいことから言うと『メリハリ』って俗っぽい言葉じゃないですか」とまず指摘。
「そうですね。ホントは『麓』って山に引っかけた言葉なので、顎の先まで『起伏のある』って考えたんですよ。でも『起伏』と『麓』ってそれもいやらしいかなって・・・」(吾郎)
「逆にこのトーンだと『起伏』の方が良いかもしれない。」(根本先生)
「へえ、面白い。」(吾郎)
更に根本先生は細かな言葉の選び方を直しました。それを聞いて吾郎は
「なんか(言葉が)過多になっちゃうね、素人が書くとね。」と言いました。
余計な接続詞や形容詞を削って文章をスッキリさせると最後の「クソ野郎」が生きてくるのだそうです。
「そうか、前置きが多すぎるから最後のオチが効かない、と。やり過ぎちゃうんですね。説明しすぎることはないんですね。十分伝わるから。」と吾郎は気が付きました。
「でも、書き手って不安なんだよね。伝わらないかと思って言葉を重ねちゃうんだけどかえってそれで伝わらなくなる。拡散しちゃう。」(根本先生)
吾郎の中にはとても豊かなイメージがあってそれが次々と言葉になるのでしょうが、盛り込みすぎる傾向があるのですね。根本先生はそれを指摘したのでした。

そして番組はエンディングへ。「山田と申します」とAD山田くんが緊張の面持ちで入ってきました。
披露したハンコは根本先生の顔に「女子アナ殺人事件」の吹き出し。山田くんにはこれのインパクトが強かったのでしょう。
最後に根本先生はにっこりと笑って
「お二人とも小説が書き上がったら是非読ませて下さい。」とおっしゃいました。
「赤だらけになるでしょうね。」と吾郎は言いましたが・・・そんなこと言わずに是非小説にチャレンジして欲しいです!


さて、私は次回を本当に楽しみにしています。次回のゲスト、梶芽衣子さんは昔から私の憧れの女優さんなのです。憧れの芽衣子様が大好きな吾郎と語り合うなんて夢のようです。今からワクワクしています。


拍手ありがとうございます
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