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芥川賞・直木賞スペシャル後編 (「ゴロウ・デラックス」 3/16)

先週に引き続き、芥川賞・直木賞スペシャルの後編です。

今週取り上げるのはまず、門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」(直木賞受賞作)。
「銀河鉄道の夜」「雨ニモマケズ」などで知られる童話作家で詩人の宮沢賢治(1896~1933)。その賢治の生涯を父・宮沢政次郎の視点で描いた小説です。
宮沢賢治は岩手県の質屋の長男として生まれましたが、子供の頃から病弱だったり家業を継がないと言い出したりと、父・政次郎は息子にハラハラさせられっぱなし。厳しくしようと思いながらも結局可愛さの方が勝って甘やかしてしまう、子煩悩な父と息子の物語です。
因みに門井さんは2003年に歴史小説作家としてデビュー。過去2回直木賞候補になり、今回3度目の正直(?)で念願の受賞となりました。
「歴史小説というと構えちゃうところがあったんですけど。」(外山さん)
「そんなことはなくて。ラブストーリーだよね、父と息子の。キュンキュンきましたね、同じ男としても。」(吾郎)
「ゴロウさん、お父さん役で…。」と外山さんが水を向けると
「僕が今言いたい言葉を言ってくれましたね。売り込みの時間ですよ。」と吾郎はアピールしました。
映像化の際には、是非稲垣吾郎で!

ここで吾郎が朗読。小学校4年生の賢治は家業とは関係ない「石集め」に没頭。それを良く思わない父・政次郎に石の標本箱をおねだりするシーンです。

賢治はまるで三歳児のように目をかがやかせて、
「便利なものがあるそうです」
「な、何だ」
「標本箱」
最初から話をここへ落としこむ気だったのだろう、賢治はすらすらと説明した。
「お父さん、買ってください」
賢治は立ちあがり、にわかに顔を寄せてきた。
「理科の勉強だじゃ。学校でも役立つ」
「…………」
「お父さん」
「…………」
半月後、政次郎は、古着の仕入れのため京都へ行った。
仕事のあいまに京都帝国大学ちかくの実験器具製作会社の代理店へ入り、われながら蚊の鳴くような声で、
「標本箱を五百ください」
「はあ」
「それを入れる大箱も。あるかぎり」
値段は予想どおり、紙箱のくせに信じがたいほど高価だった。
鉄道便で花巻へおくる手続きをしながら、政次郎は何度も自問した。
これで子供のただの石あつめに目的と、機能と、体系とかそなわる。
賢治の肥やしになる。
ほんとうになるか。
むしろ賢治を
(だめにするか)
答は分からない。
理解ある父になりたいのか、息子の壁でありたいのか。
ただ楽しくはある。
窓の外の夜空を見ながら、政次郎は、気づけば鼻歌をうたっていた。

宮沢賢治って結構贅沢な子供だったんですね。でまたあっさり買ってしまう父・政次郎がなんとも…。
実際、読者からの反響で多かったのが『宮沢賢治って貧乏な人かと思ってました』だったそうです。
「ところが現実の賢治を調べてみると、とんでもないお坊ちゃんなんですね。宮沢質店の長男として生まれ極めて裕福な環境で育つ。そして、実はこの標本箱のシーンは僕の考えたフィクションなんですが、その後宮沢賢治が東京に出て、父に「お金をください」「学費をいくらください」と手紙を書くのは本当なんです。その書簡が今でも残っています。ですから賢治は大人になっても相当お金の無心をした人だし、ということは、お父さんもおそらくお金を出した気がするんですね。『またこんなことでお金を…』とか『これでお金を出したら賢治がダメになる』とか思いながら最後には『ただ楽しくはある』って感じでお金を出しちゃうタイプの人だったんじゃないかと思います。」(門井さん)
「なぜ宮沢賢治のお父さんを主役にしたんですか?」(外山さん)
「きっかけは漫画なんです。学習漫画で宮沢賢治とかエジソンとかのシリーズになっているのを子供に読ませようと買って。で家にあると僕もついつい読んでしまう。別に小説のネタを拾ってやろうとかいうつもりはなかったんですが、たまたま宮沢賢治の伝記を読んだら、ちょこちょこ出てくるお父さんが賢治にものを書かせない抑圧的な悪役として描かれていたんですが、僕には大変立派な人に見えたんです。でこの人のことはもう少し調べてみたいと。ただの意地悪で賢治に辛く当たっているんじゃないんだと。調べ始めたら、案の定面白い!そこで編集者に相談して『書きたい人がいるんです』と申し上げたんですね。」(門井さん)
「へぇ、悪役として書かれていた…。調べるの大変だったでしょうね。」(外山さん)
「基本的に歴史なので文献資料で調べるんですが、皆さんご存じの通り、宮沢賢治に関しては資料は図書館が作れる位山ほどある。でも父・政次郎さんに関しては何にもない。ただ賢治の資料の中に…お友達が書いた回想録の中に、1行2行ちょこちょこと政次郎さんの事も出てきたりするんですね。そういう1行2行の文章をいろんな所から集めてきて…。これを“砂金を集めるような作業”と呼んでおりますが、その砂金で小さな仏像を作るような作業でした。」(門井さん)
ということで、授賞式直前の門井さんを直撃し、集めに集めた資料のほんの一部を見せて頂きました。
「場面場面で役に立った資料はあるんですが…」と言いながら門井さんが見せてくださったのは賢治が盛岡中学校に行っていた時代の盛岡の古地図です。他に賢治の母校・農業高校の校内地図も。
「本の形をした資料も大事ですが、それだけだと生の人間は出てこない気がするんですね。」と門井さん。「銀河鉄道の父」1冊を書くためにどれ位の資料を購入したかを番組スタッフに聞かれると、
「段ボール箱5箱までは数えたんですが…宮沢賢治全集だけでも3種類は揃えますし…その全集は5箱の中に数えていないんですが…」と気が遠くなるような答えが返ってきました。それらを基に門井さん独自の資料も作るそうで、
「年表は必ず作ります。宮沢賢治の年表であり、父・政次郎の年表であり、僕の小説の年表でもある。というのは、僕はフィクションのシーンを書くときでも必ずそれが何年何月何日に起こったか決めて書くんです。そうでないと他の史実との整合性が取れなくなるので。普通の史実は(年表に)普通に書いてあるんですけど、(年表に)“~シーン”と書いてあったらフィクションです。」
この方法は是非他の歴史小説作家にも勧めたい、と門井さん。
「無料で公開しますから」と大らかです。

門井さんは15歳12歳9歳の三人の男の子のお父さんでもあります。
「三人共男の子…賑やかですよね。小説を書くときは大丈夫なんですか?」(吾郎)
「自宅とは別に仕事場を持っています。」(門井さん)
「時間とか決まってるんですか?ルーティーンみたいな事とか。」(吾郎)
「僕はほぼ決まっています。朝4時に起きまして…」「へぇ~!」(外山さん)
その途端なぜか若竹さんが鉛筆を取り上げメモを始めました。
「…4時半に仕事場に入り、コーヒーを入れてクッキーを食べながら仕事を始め、7時に一端仕事を終えて家に帰り、子供達と一緒に朝ご飯を食べます。」(門井さん)
「ふ~ん」と言いながら若竹さんは鉛筆を動かしています。
「で子供達が学校に行くのが7時50分位ですので、僕はそこから昼寝をするんです。8時15分位に起きるとシャキッとして新たな気持で原稿に立ち向かう、と。」
「ちゃんとしてる~!」と吾郎は感嘆の声を上げましたが、ふと気が付いて
「若竹さんさっきから、落書きを書いてるんですか?」と話を振りました。
「いやいや、参考になるから…メモですよね?」と外山さんがフォロー。
「修学旅行のタイムスケジュールみたいな…」と門井さんが突っ込みましたが若竹さんは一切気にせず
「8時15分から何時位まで書くんですか?」
と質問したので門井さんは大笑いしました。
「後は楽屋でやって頂いて(笑)…執筆は夕方くらいまでですか?」と吾郎が話を本題に戻しました。
「そうですね、執筆は夕方くらいまで…だいたい(午後)6時で切ることにしています。」(門井さん)
「そうか、その後はお子さん達が帰ってきて、家族の時間を過ごして。」(吾郎)
「従って僕は夜は9時には寝ちゃうんです、基本的に。」と門井さん。お子さんとの時間を大事にしていらっしゃるのが分かります。
黙々と鉛筆を動かしている若竹さんを見て、石井さんも真似してメモを取り始めました。
「メモりましょう、石井さん!9時ですよ~。9時に寝て…」(吾郎)
「4時に起きます、はい!」(門井さん)
遂に吾郎まで「メモごっこ」を始めたので門井さんは
「メモを取って頂くのは大変有難いんですが、出来れば作品に感銘を受けて頂きたい…」と本音を漏らしました。

最後に紹介するのは石井遊佳さんの「百年泥」(芥川賞受賞作)。
主人公はインドのIT企業で働く日本語教師の女性。インドにやって来て間もないある日、百年に一度の大洪水に遭遇!水が引いた数日後会社に向かう橋を渡っていると、川の泥の中からそこにあるはずのない主人公の思い出の品や行方不明になっていた生きた人間が掘り返される…というなんとも不思議な物語です。
「僕すごく好きです。」(吾郎)「ありがとうございます」(石井さん)
「もう気持ちよく振り回して頂き…」(吾郎)「振り回されましたか?」(石井さん)
「ええ、翻弄して頂き…ファンタジーとリアルの行ったり来たりが気持ちよくて。」(吾郎)
「作中の『百年に一度の洪水』というのも実際に石井さんが体験なさったそうで。」(外山さん)
「そうですね。私は夫と一緒に2015年の4月にチェンナイに行きまして。行ったらすごく雨が多くて、でも初めて行ったからこんなものかなと思っていたら、ある朝窓を開けると道が川になってて。それから3日間外へ出られず…。」(石井さん)
「本当にリアルなんですよね。匂いとかもしてきそうな。」(外山さん)
インドでの実体験から生まれた作品ですが、その醍醐味は日常と非日常とが折り重なる何とも奇妙な世界観です。それが分かる一節を外山さんが朗読。

たしかにラッシュ時のチェンナイの交通機関や幹線道路の混乱は想像を絶し、例えば、この会社の重役は全員、ラッシュを避けるため飛翔によって通勤するが、それはチェンナイで暮らしはじめて以来、今では見慣れた光景になった。
たいてい毎朝九時ごろ、すでに三十度をはるかに越える酷暑の中を私は会社玄関に到着する。
その時ちょうど前方で脱翼した人をみると副社長で、
「おはようございます」
あいさつすると大柄な彼は私にむかって愛想よく片手を上げた。
そのまま趣味のよいブルーのワイシャツの襟元をととのえつつ両翼を重ねて、駐車場わきに無造作に放り出す、すると翼が地上に到達する直前に係員が受け止め、ほぼ一動作で駐車場隅の翼干場にふんわり置いた。

「私、本当にインドの人は飛んでいるのかと思って…」(外山さん)
「僕も一瞬ちょっと…ネットで調べようかと…」(吾郎)
「いや、まさかと思ったんですけど」「こういう書き方したらそう思うよ!」
外山さんと吾郎が口々に言うのを聞いて石井さんは
「思うツボですね」とニンマリ。
「ホントに不思議なんですよ。ありそうなことだから。」(外山さん)
「僕も今CMで白い羽つけてる。天使の羽ですけど。」(吾郎)
マジックリアリズムですね。」石井さんがさらっとキーワードを言いました。
マジックリアリズムとは、普通の世界が舞台のはずなのに当然のように非日常な事が起きる表現方法の事です。石井さんがお好きだというガルシア=マルケスや大江健三郎などがマジックリアリズムで独特の世界を表現していますが、「百年泥」の奇妙な世界観もこの手法で描かれているのです。
「現実というのは荒唐無稽で、その現実を捉えるのに忠実な叙述の仕方ではないかと思います。世界をありのままにけったいなままに書こうとすると、こういうやり方が要請されてくると私は思うんです。」石井さん独特の世界の捉え方に全員が「へぇ~」と感心しました。
「これはインドで執筆されたんですか?」(吾郎)
「全部インドですね。インドの自分のオフィスで。」(石井さん)
「生徒達とのやりとりはご自身の経験から?」(吾郎)
「そうですね。もうヒデェ目に遭ったので。」(石井さん)
「そうとう生徒達に対して思いがあるようで…」(吾郎)
「明日何を教えるか教本作りを毎日やっていて、土日もずっと教本作りで小説どころの騒ぎじゃなくて。でもなんか教室で面白いことを言ったりやったりするとノートの隅にちょこちょこっとメモだけはして。である時2~3ヶ月暇があったので『書いたれ~』と必死で書いたのがこれです。」(石井さん)
「3ヶ月でこれを書かれたんですか?!」(吾郎)「スゴイですね、速い!」(門井さん)
「だから本当に奇跡です。何かが私に書かせてくれたんやと思っています。」(石井さん)
「じゃあ次回作は?」(吾郎)
「デビューまでが長かったので何十…百近く書いているんですけど…」(石井さん)
「でも百編もあったら材料があるって事じゃないですか。」(吾郎)
「今書き直しているものはありますけど。インドの話ではなくて日本の話で、いづれにせよ荒唐無稽なけったいな世界を書くつもりです。」(石井さん)
「マジックリアリズムはご自身の中のテーマですか?」(吾郎)
「ええ、荒唐無稽なものじゃないと書く気がしない。」(石井さん)
こちらの次回作も期待して待ちたいです。

いよいよ番組はエンディングへ。
吾郎が手元の資料を見ながら
「なんか若竹さんがどなたかに会いたかった…?」
と質問すると若竹さんは恥ずかしそうに笑って
「香取慎吾さんに会いたかった…」と一言。(そうですか、若竹さんもNAKAMAですか!)
次の瞬間その若竹さんが「あ”~~~~!!」と絶叫。入ってきたAD山田くんを慎吾と見間違えたらしいです。
「そうかぁ…ごめんねぇ。一瞬香取くんに見えたね。」吾郎がフォローしました。
その山田くんが作ったのはお三方の似顔絵の消しゴムはんこ。喜んで頂けてよかったです。

今回の3作品はどれも興味深い内容で惹かれました。「おらおらでひとりいぐも」と「銀河鉄道の父」の岩手弁の響きは味わってみたいです。そして私は以前ガルシア=マルケスの「百年の孤独」と大江健三郎の「同時代ゲーム」を読んだことがありマジックリアリズムは割と好きなので、石井遊佳さんの「百年泥」にはハマるかも知れません。


拍手ありがとうございます

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プロフィール

はちミツ

Author:はちミツ
【注意:当ブログの内容の無断転載は禁止します。】

稲垣吾郎さん大好き、SMAP大好き!の主婦。
吾郎ファン歴は26年目になります。
彼らがいつかまた集まりたいと思った時そうできるように、彼らがそれぞれ今いる場所で益々輝いていってほしいと願っています。
だから「SMAP大好き」という気持ちも「新しい地図の3人の活動を応援する」気持ちも私の中では同じ一つの思いなのです。
神奈川県在住。

近況
①毎週水曜日は「an・an」の「稲垣吾郎のシネマ・ナビ」をチェック!。
②「稲垣吾郎オフィシャルブログ」、twitterアカウント @ingkgrofficial も必見!
③「ゴロウ・デラックス」再開熱望!

メールは↓へ。
walkwithgoro☆hotmail.co.jp
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